疾患について

アトピー性皮膚炎

痒みを伴い慢性的に経過する皮膚炎(湿疹)ですが、その根本には皮膚の生理学的異常(皮膚の乾燥とバリアー機能異常)があり、そこへ様々な刺激やアレルギー反応が加わって生じると考えられています。

皮疹の重症度
重症 高度の腫脹/浮腫/浸潤ないし苔癬化を伴う紅斑、丘疹の多発、高度の鱗屑、痂皮の付着、小水疱、びらん、多数の掻破痕、痒疹結節などを主体とする。
中等症 中等度までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹、掻破痕などを主体とする。
軽症 乾燥および軽度の紅斑、鱗屑などを主体とする。
軽微 炎症症状に乏しく乾燥症状主体

治療

アトピー性皮膚炎は遺伝的素因に加え、様々な内的、外的悪化要因を持った皮膚病ですので、現時点では病気そのものを完全に治す薬物療法はありません。従って対症療法が治療の原則になります。


ステロイド外用薬

アトピー性皮膚炎の炎症を充分に鎮静することができ、その有効性と安全性が科学的に立証されている薬剤です。


非ステロイド外用薬

炎症を抑える力は極めて弱く、接触皮膚炎(かぶれ)を生じることがまれではなく、使う場面は多くありません。


カルシニューリン阻害外用薬(タクロリムス軟膏)

アトピー性皮膚炎の新たな治療薬として1999年に登場した薬剤です。タクロリムス軟膏には0.1%成人用(16歳以上を対象)と0.03%小児用(2~15歳を対象)があります。顔の皮疹に対してステロイド外用薬のミディアムクラス以上の有用性があります。塗り始めて数日間、ほとんどの方が刺激感を訴えますが、症状が軽快すると共に刺激感も消えていきます。顔に好んで使用されますが、その他の部位にも使えます。ただし、本剤の薬効はステロイド外用薬のストロングクラスと同等ですので、あまり重症度の高い皮疹では十分な効果が得られません。


ステロイド外用薬の副作用

・にきび
・潮紅
・皮膚委縮
・多毛
・細菌、ウイルス、真菌などの皮膚感染症
・まれにかぶれ


内服薬

・抗ヒスタミン剤(抗アレルギー剤)内服薬
・漢方(体質改善目的)
・ビタミン剤(体質改善目的)


通常の治療を行ってもなかなか良くならないアトピー性皮膚炎の治療では、悪化因子を調べ、取り除くこともとても大切なことです。まず、アレルギーの原因となるアレルゲンについては年齢により多少違いがあり、乳幼児では食物アレルゲン、それ以降ではダニ、ハウスダストなどの環境アレルゲンが関係していることがあります。しかし、やみくもにアレルゲン検査を行って、それだけで判断するのではなく、実際にそれらで悪化するかを確認する必要があります。刺激因子としての悪化因子として、汗で悪化するという方も多く、また、空気の乾燥や、皮膚に触れる様々な物質、ストレスなども見落とせない悪化因子です。

脂漏性皮膚炎(頭皮のフケ症、かゆみ)

皮脂腺が発達し、皮脂の分泌の多い部分に発症します。頭皮では、脂っぽいフケや皮膚の赤み、顔で鼻の周囲などに脂っぽい薄いかさぶたのようなものを伴った赤みが見られるのが特徴です。こうした症状は、胸や背中の中央部、わきの下、陰部など、頭や顔以外にも生じることがあります。かゆみの程度は、ほとんどない人からひどい人までさまざまで、個人差があります。 脂漏性皮膚炎の原因は、皮脂中のトリグリセリドが皮膚常在菌によって分解され、分解産物である遊離脂肪酸が皮膚に刺激を加えることによって発症します。また、「マラセチア」という真菌が悪化因子として注目されています。当院では、マラセチアを特殊な液で染色して顕微鏡で確認することができます。

治療

マラセチアが多くみられる方は外用抗真菌剤を塗布します。かゆみが強い時や頭皮が赤い時はステロイド外用剤を併用します。マラセチアは、外用抗真菌薬を塗布すると、1~2週間で症状が軽快します。ただ、3~4ヶ月で再発することが多く、外用抗真菌薬の再塗布が必要になります。頭皮のケアーに関しては、抗真菌薬の配合されたシャンプーとリンス(コラージュフルフルネクスト)を販売しております。かなりの確率でマラセチアが原因の方は予防できます。 治療をしなくてもいぼは1年~数年、みずいぼは半年から3年ぐらいで自然に治ります。

にきび

にきびの最初の症状は、面皰(めんぽう)という皮脂が毛穴にたまった状態です。毛穴の先が閉じている白にきびと、毛穴の先が開いている黒にきびがあります。面皰が炎症をおこすと赤いぶつぶつとなり、さらに炎症が進むと膿がたまったぶつぶつ(膿疱)になります。さらに炎症がひどくなると、皮膚の下に膿がたまった袋ができたり(嚢腫)、硬く大きく触れる状態(硬結)あるいは結節になったりします。炎症が治まって平らになっても、赤みが一時的に残ります。この赤みは時間とともに消えますのでご心配ありません。しかし、炎症が強いと、盛り上がったケロイド状の痕(肥厚性瘢痕)やへこんだ痕(陥凹性瘢痕)が残ってしまうことがあります。実際のにきびの症状は、面皰や丘疹、膿疱、炎症後紅斑などが混じっています。女性の方では性ホルモンの影響を受けます。月経周期にあわせて性ホルモンのバランスが変わるため、「大人のにきび」の女性患者では、月経前ににきびの悪化がみられます。しかし、思春期の患者さんでは、必ずしも月経周期とにきびの症状に関係はないようです。

治療

アダパレンという毛穴の詰まりに効果があり、にきびをできにくくする外用薬と、アクネ菌や炎症に有効な抗生物質の内服薬と外用剤があります。赤いぶつぶつしたにきびや膿を持ったにきびがあれば、アダパレンと抗生物質の内服薬と外用剤を組み合わせて使い、赤いにきびがよくなった後はアダパレンでの再発予防(維持療法)をする方法が、標準的な治療法です。


その他の治療

当院ではケミカルピーリングや漢方薬内服、ビタミン剤内服を強く推奨しています。


日常生活の注意点
ストレスの少ない規則正しい生活をお勧めします。にきびを潰したり、触ったりしているとよくなりません。にきびを触らないようにしましょう。洗顔は1日2回洗顔料をよく泡立てて、手で優しく洗い、十分な水で洗顔料を洗い流してください。洗顔料はにきび用のものをお勧めしますが乾燥肌の方は敏感肌用洗顔料を使ってください。また、ノンコメドジェニックの化粧品も強く推奨します。甘い食べ物(チョコレートなど)とにきびの因果関係はわかっていませんがにきびがひどい時はさけてください。

蕁麻疹

蕁麻疹は皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡かたなく消えてしまう病気です。膨疹(皮膚の盛り上がり)の大きさは1~2mm程度のものから手足全体位のものまで様々で、また一つ一つの膨疹が融合して体表のほとんどが覆われてしまうこともあります。形もまた様々で、円形、楕円形、線状、花びら状、地図状などと表現されますが、それらの形に本質的な意義はありません。


蕁麻疹の原因

・ストレス(免疫力の低下、体調不良、精神的な疲れ)
・寒暖差(温熱、寒冷)
・発汗
・低気圧(梅雨前線、秋雨前線、台風)
・物理的(圧迫、摩擦、日光、振動など)
・ほこり、ダニ、動物、花粉、黄砂
・食べ物(数十分後にかゆくなる)、アルコール
・薬 ・感染症(細菌、ウイルス、真菌、寄生虫)
・膠原病


治療

抗ヒスタミン薬(抗アレルギー剤)内服と原因除去が基本となります。

かぶれ(接触皮膚炎)

手のひら・手の甲・指ときには肘から下の腕の部分に発生する湿疹を手湿疹といいます。手のかぶれすなわち接触性皮膚炎の一つと考えられています。主婦の手に生じた場合は主婦湿疹といいます。


手湿疹の原因
手は毎日の生活の中で最も外界の異物に接触する部位といえます。中でも洗剤・シヤンプー・紙類・布類が接触原因と考えられています。また水を頻繁に使用することも原因の一つとされています。手湿疹は1年中発生しますがどちらかといえば冬に多く見られます。冬は主として乾燥と寒さで皮膚の皮脂と水分が不足するために起こります。夏は主として発汗から起こります。

手湿疹の治療

治療はステロイドの外用が主で、ハンドクリームを頻繁につけることをお奨めします。


手湿疹のスキンケア

洗い物をするときは薄い木綿の手袋をしてからゴム手袋を使用しましょう。洗剤を使う回数を少なくしましょう。

とびひ

とびひとは民間で言われる俗名で、皮膚科の正式病名は伝染性膿痂疹と言います。細菌による皮膚の感染症です。ブドウ球菌や溶連菌などが原因菌です。接触によってうつって、火事の飛び火のようにあっと言う間に広がるから、たとえて“とびひ”と言うのです。あせも・虫刺され・湿疹などをひっかいたり、転んでできた傷に二次感染を起してとびひになります。また、鼻孔の入り口には様々な細菌が常在しているため、幼児・小児で鼻を触るくせがあると、鼻の周囲からとびひが始まったり、その手であせもや虫刺されなどをひっかくことでとびひになってしまいます。 とびひはだいたい2種類に分けられます。1つは水疱ができて、びらんをつくることが多い水疱性膿痂疹、もう1つは炎症が強く、かさぶたが厚く付いた非水疱性、これを痂皮性膿痂疹と言います。


治療

抗生剤を4~7日間内服しステロイド外用剤と抗生剤外用剤の混合薬を患部に塗布します。かゆみの強い方は抗ヒスタミン剤を追加内服します。抗生剤内服中はプールと湯ぶねは禁止となります。

いぼ、みずいぼ

イボはヒト乳頭腫ウイルス、ミズイボは伝染性軟属腫ウイルスが皮膚に感染してできます。


治療

イボは液体窒素冷凍凝固療法、イソジン液塗布、いぼころり塗布(市販薬)などが基本となります。みずいぼはペンレステープ(麻酔テープ)を2時間貼った後にピンセットでつまんでとります。

掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症はウミが溜まった膿疱と呼ばれる皮疹が手のひら(手掌)や足の裏(足蹠)に数多くみられる病気で、周期的に良くなったり、悪くなったりを繰り返します。ときに、足と手のほかにスネや膝にも皮疹が出ることがあります。皮疹は小さな水ぶくれ(水疱)が生じ、次第に膿疱に変化します。その後、かさぶた(痂皮)となり、角層(皮膚の最表層にある薄い層)がはげ落ちます。後にこれらの皮疹が混じった状態になります。出始めに、よくかゆくなります。また、鎖骨や胸の中央(胸鎖肋関節症)やその他の関節が痛くなることがあります。足の皮疹は水虫によく似ていますので、診断をはっきりさせるために皮膚表面の角層を一部取り、顕微鏡で調べて、水虫を起こすカビ(白癬菌)がいるかどうか調べる必要があります。 原因として、歯科金属に対するアレルギーが引き金となり掌蹠膿疱症が発症した事例が報告されています。パッチテストで確認することができます。扁桃腺や歯、鼻などに細菌による慢性炎症があると掌蹠膿疱症が生じることがあります。


治療

外用薬はステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬、サリチル酸ワセリンなどが主に使われます。内服薬は抗ヒスタミン剤、ビタミン剤(ビオチン、ビタミンCなど)、漢方薬、抗生剤(ミノサイクリン、クラリスロマイシンなど)が基本となります。 喫煙は悪化因子のため禁煙しましょう。

尋常性乾癬

銀白色の鱗屑(皮膚の粉)をともない境界明瞭な盛り上がった紅斑が全身に出ます。大きさ、数、形は様々で、発疹が癒合して大きな病変を作ることもあります。できやすい部位は慢性の機械的な刺激を受けやすい頭部、肘・膝、臀部、下腿伸側などです。青壮年期に発症することが多く、多発しますが、通常、内臓を侵すことはありません。かゆみは約50%の患者さんにみられます。爪の変形や関節炎を伴うこともあります。まれに発疹が全身におよぶこともあります(乾癬性紅皮症)。人口のおよそ0.1%と推定されています。 原因はまだ完全にはわかっていませんが、乾癬になりやすい遺伝的素因があることは解っています。遺伝的素因に様々な環境因子(不規則な生活や食事、ストレス、肥満、感染症、特殊な薬剤など)が加わると発症すると言われています。


治療

通常、外用薬からスタートします。外用薬はステロイド外用剤、ビタミンD3外用剤が主に使われます。内服薬は、漢方、ビタミン剤、イコサペント酸などの併用が基本となります。かゆい時には抗ヒスタミン剤を追加します。 食べ物はバランスよく、また規則正しい生活を勧めます。カロリーのとりすぎは乾癬を悪化させます。またストレスも皮疹を悪化させますのでできるだけ避ける工夫を考えてください。

水虫

白癬は皮膚糸状菌というカビによって生ずる感染症で、新たに皮膚科を受診する患者の10%程度を占めるありふれた病気です。白癬の中でも足に生ずる足白癬は、夏になると日本人の4人に1人見られると予想されています。足白癬は、家庭内の足ふきマットやスリッパなどを長い間共用していると、それらに付着した白癬菌が足に感染して発症する、家庭内感染によるものが大部分を占めます。 検査は皮膚や爪の一部を採取して特殊な液をつけて顕微鏡で白癬菌を確認します。


治療

足白癬は抗真菌剤外用薬塗布が基本となります。爪白癬や角化型(かかとなどの皮膚の硬い所)足白癬では抗真菌剤内服薬を使います。内服薬は1クールが6カ月1日1回1錠内服となります。ほとんどの方は1クールで完治します。